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結婚して、「過呼吸」という超具体的な症状が現れたとき、はじめは「結婚して環境が変わったからかな?」と思った。
がんばって料理して洗濯して、ちゃんと仕事に行って、ダンナさんが帰ってこなくてもワガママを言わず・・・。
ダンナさんは、昔からそうしているように、そんな私を軽い調子であざけった。
「きみは、料理もやったことない、おじょーさまだもんねー」
「そんな仕事、ヤメればいいじゃん」
「図太いからうらやましい」
そして、後輩のユウちゃんを引き合いに出す。
「僕とかユウちゃんはさぁ、繊細だからさー」
「優秀なユウちゃんは、しっかり仕事をして」
「優秀ゆえの苦労、ユウちゃんとはわかり合えるな」
・・・じゃあ、ユウちゃんと結婚すればー!?と思うじゃないですか。
「ユウちゃん」は私よりひとつ下で、アパレルに就職したもののウツ病のような状態になってあっという間に仕事をやめて、アルバイトで充電したのち、親の紹介(コネクション)で貿易会社の総合職に再就職した。
いまはエリート商社マンと結婚して海外暮らし。
その「ユウちゃん」が、最初のアパレルの仕事を挫折したころ、ダンナさんは私と既につきあっていたが、
断然「ユウちゃん」の味方だった。
「ユウちゃんはかわいそうだ!あの会社の服は、ぼくももう買わないことにする!」
と、ユウちゃんを擁護し、味方する発言を私に向かって重ねた。
同じころ、私も仕事でさんざん苦労していたが、ダンナさんは意に介さなかった。
なぜなのか・・・彼がハッキリ理由を口にしたことはないが、私はわかっているつもりだ。
私は、ダンナさんにとって「格下」の女で、能力不足と努力不足に同情の余地はない、とダンナさんは思っているのだ。
ユウちゃんは、能力もあって努力もしている。だから、苦労するとかわいそう。
でも彼女である私は・・・「まあ、おまえじゃ、苦労しても当然だ」
というのが、どこかにあったのだろう。
それでも、仕方ないかなと思っていたのだ。
たしかにユウちゃんは、気がきいて可愛くて、学業も仕事も優秀。
家に帰れば両親が、
「正社員と派遣や契約では、生涯賃金が4倍違うんですってねーえ!」
と、矢のようにイヤミを浴びせ、契約社員なりに現場のリーダーになって、
一ヶ月で体重が五キロ落ちて、頭痛を抱えて出勤している娘に、
「新しい仕事はどう?」
とか、
「大変なのね」
とか、優しい言葉など望むべくもない。
かといってダンナさん(当時は彼氏)に会っても、なぐさめられるどころか、
「そんな不利な仕事をしている自分が悪いんじゃん」
「愚痴なんか聞きたくないから」
と、ニベもない。
結婚して、精神的に調子を崩して、通勤が近い派遣の仕事に変わることを検討しはじめたとき、
ダンナさんがしきりに「そんな仕事やめろやめろ、変わればいいじゃん仕事」を口にするのを聞いて・・・私の中で何かが切れた。
当時、契約社員だったが、ランクアップできそうな雰囲気だったのだ。
粘っていれば、正社員登用もあるかもしれなかった。
私は泣き叫んだ。
「私が・・・私が契約の仕事だから、たかが契約社員の仕事だから、そんなのヤメちゃえって思うの!?」
「ユウちゃんみたいな、エリートのお仕事だったら、もっとガンバレって応援してくれたり、励ましてくれたの!?」
「正社員してて、ステイタスのある子だったら、結納も結婚式も、もっとちゃんとしたかもって・・・前に言ってたもんね!」
ずーーっとガマンしていた言葉だった。
私なりに・・・努力してきたのに・・・。
「ハケン」「契約」ただその言葉だけで、すべてが否定されてしまう。
ハケンの現場で認められて、最年少でリーダーになって・・・私がどれだけ何と闘ってきたか、
何も知らないくせに・・・!!
ユウちゃんの仕事は確かに立派だけど、親のコネで手に入れた地位。
コネでも入社してしまえば、「責任ある社会人」。
必死で自分の力で、派遣の現場からはい上がっても、契約社員なら「バイトと一緒でしょ。気楽でいいね」。
ダンナさんの親戚に、ライターをやっている人がいる。
その女性は、配偶者の転勤で海外住まいをし、その体験を発表することでライターになった。
私がいま、表で少しだけモノを書く機会を得たのは、自分でお金をつっこんで、
自分で育てた能力で、それが認められることで得たポジションなのだ。
けれども、当初のダンナさんの評価は、
「ライターしてるMさんは、さすがだなあ。あそこは夫婦そろって優秀だ」。
私がドコに何を書こうが、「頭が悪いのに、難しそうなこと書きたがるんだね」。
私は、ほとんどを自分自身の力で手に入れてきたのに・・・。
たとえそれが、本当にささやかな成果だとしても。
家族もダンナさんも、私を決して褒めたり評価することはない・・・。
結婚前に訊ねたことがあった。
「あのさ。恋人や結婚って、唯一絶対の味方を作ることのように思ってたんだけど・・・ダンナさんは違うよね?
ユウちゃんの味方はするけど、私の味方はしないよね」
ダンナさんは、「何を言ってるんだろう」「面倒くさいこと言うなあ」という顔をしていた。
答はたしか、もらっていない。
「結婚するんだし、いいじゃん。ガタガタ言うなよ」
という空気で、食事していたレストランをあとにしたと思う。
ほめて欲しい・・・という気持ちに気づいたのは最近だ。
私を蔑み続けた、彼氏と両親。
能力も努力も足りない、と言われる私。
でも、私程度の能力や稼ぎやポジションでも、褒められている人はいる・・・。
ユウちゃんと僕は繊細。
ユウちゃんと僕は優秀。
ユウちゃんと僕は努力家。
ユウちゃんと僕は有能。
うちの娘は役立たず。
うちの娘は生意気。
うちの娘は親に迷惑かけてばかり。
うちの娘は「一流」にならなかった!
進学、就職を通じて、私はついに一度も、誰からも
「よかったね」
と言われたことがない。
ほめられないのなら・・・せめて同情して欲しい。
かわいそうな子だと同情して!!
あざけられたり、蔑まれたりには、もう疲れた・・・。
叩いて叩いて凹ませて、それで彼らは無責任に「前向きに元気にがんばるべきだ」という・・・。
なぜ私はこんなに疲れているの。
なぜこんなに自尊心がペシャンコになってしまったの・・・。
同情でいい。せめて同情を。
取るに足らない娘だけど、いつもあがいて、自分でつかんできた細い道なんだ・・・。
よくよく思い出してみると、独身時代、仕事をしていて急に胸が苦しくなったり、
息苦しくなることがあった。
部屋の酸素が薄いせいかな?とか、気のせいかな?と思ってきたんだけど、
いま思えば、精神的な不調が身体に出始めていたんだね。
結婚して泣いたりわめいたりするようになって、
「崩れ」はするけれど、胸が苦しい日は減った気がする。